バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話/09

 

月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話09
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 半年ほど、頑張った、しかし、評価も、仕事量も増えることはなかった、
 店の外で歌を歌ったりもした、CDを手配りしたりもした、グッズの販売だって手伝った、レッスンももちろん真面目にやった、
 これくらいで音を上げるつもりはなかった、しかし、何も変わらなかった・・・
 「新人アイドルの蜜羽 四葉です!よろしくお願いしまーす!!」
 店の前でふりふりの衣装を着て笑顔を振りまく私を、
 道行く人々が憐みの目で見つめている、
 そんな中で、雑誌の取材の仕事を受けた、メインは歌鳥歌語理であり、私はその中の対談相手の一人、という形だ、
 事務所が押したい人間を集め、雑誌社と話をして歌鳥歌語理を利用して、という事であると後から聞いた、
 雑誌社の青いじゅうたんのしかれた綺麗だが、灰色で、無機質な通路、
 「さ、行ってきなさい」後ろにいる若き女性専務に言われ、
 目の前の壁にある、枠と丸のぶ以外壁と同化したような扉を取っ手を回し、開ける、
 「ひさしぶりね、四葉ちゃん」
 自分の顔が笑顔を形作って行くのを感じる・・・
 「ひさしぶりです、歌語理さん!!」
 向こうのソファに座る黒髪の女性は、私に微笑みかけてくれる、本心であってほしい、そう私は一瞬思うが、その考えより、一緒に仕事できることの喜びの方が上回った、
 そのまま、部屋少し左側に備え付けられた、歌語理さんの向かいの、木枠の曲線ソファに座る、
 部屋は小さいもののベージュを基調としたホテルの端室のような柔らかな雰囲気に包まれ、向こうの縦長方形の窓からは小さなビル並ぶ青空の街の様子がうかがえ、
 私達の間には鉄柱足のガラスのテーブルが置かれている、
 と、歌語理さんがにこりと微笑みかけてきてくれた
 「お仕事の様子はどう?」
 事務所で時々会うたびにかけてくれた言葉・・・
 「順調です!!」
 嘘でもそう言っておきたかった・・・
 「そう、よかったわ・・・」
 ・・・思わず黙り込む私・・・
 「そうだ、今度一緒にカフェに行きましょう、ケーキのおいしい店があるの」
 「あ・・・はい!!」
 「前にお忍びで一緒に行った天丼屋もおいしかったわね・・・うふふ」楽しそうに浮かぶ笑顔・・・「あ、仕事の話しなくちゃね、それじゃあ、質問に移るわね、」
 「は・・・はい!!」
 そこからはたわいのない話である、新しい曲の事、直近の仕事の話、家であったこと、好物の事、仕事への意気込み、等々、
 ・・・こうして、よくしてくれてるのに、申し訳ない気持ちにもなる・・・
 「あ、」
 歌語理さんが突然何かに気付いたように左手首裏側に付けたピンクのバンドの銀色のアナログ腕時計を見る
 「そろそろ時間だわ・・・」
 そっか、もう終わりか・・・
 歌語理さんは視線をしっかりと私に向け、
 「ありがとうね、四葉ちゃん」
 優しい声をかけてくれた、そのまなざしも、声と同じく、見守るような、優しいまなざし・・・
 「あ・・・いえ」
 まなざしに見とれつつも急いで椅子から立ち上がり、頭を思い切り下げる
 「こちらこそ、ありがとうございました!!」
 「いえいえ、そこまでしてくれなくていいのよ、今度みんなと遊びに行きましょうね~」
 掛けてくれた言葉に、私は心が張り裂けんばかりに嬉しくなり、
 「はい!」
 大声で返事をし、思わずもう一度思い切り礼をしてその後、後ろに振り返り、扉へと歩き出す、
 そして、扉を開けた私は部屋を出て、この場から去る前に、そこにいた女性専務にも一礼し、
 「よく頑張ったわね、大丈夫、あなたはこれからもっと輝ける、今度、大き目の仕事を回してあげましょう!」
 その言葉に、私は本当か否か、専務の顔を確認するかのように頭が上がり、
 その真面目そうな顔に、とりあえずの嘘はないと確信し、
 「あ・・・ありがとうございます・・・」
 戸惑い、不安になりながら再び礼し答える私、そして、頭を上げ、そのまま去ってしまった・・・
 ・・・大きな仕事そのものは成功した、アイドル合同のフェスである・・・
 しかし、それで私が売れることはなかった・・・
 そんなこんなで数ヶ月が経過した頃・・・
 「え?歌語理さんが・・・倒れた!?」
 
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