月夜と私の過去と光の城 ダブモン!!4話02
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私は、夜の森の中で、焚火を見つめていた、
パチパチとはぜる炎をただひたすらに見ている、
火の番、それが私に与えられた役割だった、ただ、それが恐ろしく空虚で、少しの悔しさがある・・・
・・・
森の中、夜も更けて来て、広い場所を一つ見つける、
地面に焦げ跡があり、誰かがたき火でもしていたようだ
「それじゃあ、ここで野宿か・・・」
「だな、」
「だね、」
「・・・はぁ、しょうがないか・・・」
旅の中で野宿になれてしまった私は、一緒にたき火跡を取り囲む良星、兎白、鼓動、男の子三人の言葉にすんなり同意してしまう、
とは言っても、こいつらと野宿なんて初めてなわけだが・・・
まぁ、とりあえずやるべきは・・・
「それじゃあ・・・二手に分かれて焚火の薪を探しましょう、私とウィルピーで探すから、そっちもよろしく、火元は・・・」
「俺がどうにかするぜ」
声を掛けてきたのは男の子達に同行しているダブモン、カンテーラという、
濃紺のフードつき袖付きマントに身を包み、中は黒いもやのようになっていて、フードの中から黒い両の瞳を覗かせ、
フードの左上の所に濃紫の紡錘形、左の後頭部にまで伸びる円を左右に重ね、重ねた部分を切り取ったようなの装飾がある、月の形をしているということはすでに夜なのだろうか、
左手に黄色の火のついた燭台の入ったカンテラを持っているため、それで火はどうにかするのだろう、
「それじゃ、ちゃっちゃと集めましょ、ある程度集まったら集合ね」
「お~」
「お~」
「お~」
方々に分かれ、薪をかき集めてくる、
「いやぁ、二人で集めるよりも楽そうですね」
「まぁね・・・」
焚火に仕える薪はすぐに集まった、森の中である上、使えそうなものは拾う際にウィルピーが仕分けしてくれたうえ、同様にカンテーラも男の子達と同行しつつ仕分けするように意見していた様子が見えたので当たり前だが・・・
そして、焚火の跡がある場所に焚き木を置き、横に予備の薪木を分け、
「カンテラブレイズ!!」
カンテーラの一言により彼のカンテラから炎が噴き出て、薪につき、みんなが囲んで見守る中で、焚き木は焚き火へと変わったのだった、
「そろそろ、腹減ってきたな、」
「だな、料理の準備でもするか」
「さっさと始めようよ」
三人が話し始めたのを聞いて、思わず私は問いかけた
「料理って・・・ねぇ、私は何すればいい?」
「んー、今回は俺達もひさしぶりに外で調理するからなぁ」
私の正面にいる、少し軽そうな少年、双運 良星(そううん りょうせい)
黒いバンダナで立った黒髪に黒目をしており、赤銅色の袖なしのシャツに、左肩の後ろにはなぜか炎の翼のようなブローチが付いていて、
ジーパンに両腰から下に鞄のような大きな大量にポケットを下げたベルトを着け、さらには、両肩から小荷物をかけている、
「キャンプでやったことはあるけど、あれ、冬に一度みんなで行って以来だっけ・・・」
左手側、少し身長の高い、稲走 兎白(いなばしり とはく)
ボサリとした黒髪の少年、根実から飛び出す鮫の絵が描かれた長袖のシャツに、
ポケットのたくさんついた青いジーパンをはいている
「そうだよね、へた打てないよ、道具も食材も新しいものだしね・・・」
右手、太めの海象 鼓動 (かいぞう こどう)
黒髪の短髪にサバンナの草原シャツを着ており、ジーパン、腰にはボックス状のポケットがたくさんついたひざ上までの皮を一対下げている
・・・二人も片側の肩からそれぞれ荷物をかけている・・・
すると、良星が、私の方を不意と向く
「お前、料理の経験は?」
手伝いを言い出したものの、そんなことを言われても実は困ってしまう、家で手伝いすらあまりしない私なのだ、当然、料理の経験は無い、電子レンジで弁当を温めたりカップラーメンに湯を注いで三分待ったりしたことはあるが、そんなもの、料理の経験とは言えないだろう、
仕方が無い、ここは素直に答えよう・・・
「無い・・・」
「じゃあ、そうだな・・・今回は・・・あ、火の番でもしててくれ」
「おいおい!!」
今度は私の正面右手から良星に抗議の声がかかった、誰有ろう、火付け役のカンテーラだ、
「この火は俺が付けたんだぞ、火の番も俺の仕事だろ!?」
「それなら三人でやっててくれよ、」そして、良星は、私の方に向き直り、「料理は今度、したいと思ったら申し出てくれ、教えるから」
そう言って、兎白、鼓動と共に焚き木左の方に集まる、、
すると、良星が背中の鞄を床に置き、そこからまな板代わりの薄い板を三枚取り出して配り、
残った二人は肩から背中に背負った袋をこちらも降ろしてから食材と調味料を取り出し方々に配る、
緑色の丸いキャベツ、中程の川魚、足つきの鶏肉、その他もろもろ、そして、それぞれが足のポケットから鞘付きのナイフを取り出して鞘から抜き、
「鶏肉とキャベツは半分ほど残せよ」
「わかった」
「わかってるよ!!」
今度は兎白が音頭を取り始めた、一番料理がうまいのだろうか・・・
「ねぇ!」
「なんだ?」
応えたのは良星だ
「あんたら、料理手馴れてるみたいだけど・・・?」
「ああ、時々さ、兎白の家に三人で泊まったりしてたんだよ、こいつの母親忙しくって、時々家にいないんだよ、でもさ、その時にこいつだけに料理させるわけにはいかないじゃん、自然と三人でするようになって」
へ~
料理はそれぞれ、良星と鼓動がキャベツと鶏肉を半分に切って袋に戻し、兎白が魚に白い粉、塩かな、塩を振りかけて少しへこんだ古い鉄の水筒から出した水で洗っている所だった
「ねぇ、何を作るの?」
「あ!!」
良星が何かに気付いたように袋から大きな鍋を取り出し、
「カンテーラ!水汲んできてくれ!!薪探してる途中に湖と飲める湧き水あったろ!!」
「え!?俺!?」
目を見開き自身を指すカンテーラ
「その中じゃ場所はお前しか知らないだろ?」
「・・・しょうがねぇな・・・」
カンテーラが放り投げられた鍋を受け取り、振り返り私の正面の方に去って行く、
ふぅん、あっちの方に湖が・・・
焚き木を探してる間にそんなところ見つけてたの・・・
というか、いやに水使うと思ったら水源見つけてたんだ・・・
こう思った時にはそれぞれが食材を手ごろな大きさに切って捌き始めている所だった、
ここまで来たら声かけたら怪我しそう・・・
おとなしく、火の番に戻る
「よかったですね」
話しかけてきたのは、私の傍らのウィルピー
「何がよ・・・」言葉の意味は予想は出来るが・・・少し億劫になってしまう
「だって、私達が野宿した時は、料理できなくて保存食かじってるだけでしたからね」あぁ・・・
「それは・・・否定しないけど・・・」
そう、私もウィルピーも料理は出来ない、あの女神も呼んでも来なかった、
仕方無く、保存食を買い込み、野宿の際はそれをかじることにしていたのだ・・・
「最後の方、お金なくてひどかったですが」
「それは言うな」
思わず言って黙り込んでしまった・・・
と、こういうわけで、私は空虚にとらわれてしまったのだ、
私は・・・何のためにいるんだろう・・・
火を見つめていると、昔の事を思いだす・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――