海の街と鮫 ダブモン!!11話09
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「この辺りか・・・?」
歩いてきたのは、遠く先に夕暮れの海の見える路地・・・
「あ!相棒!!あそこに宿屋の看板があるわよ!!」
フリィジアが右手人差し指で指した左少し上の方には先には確かに、左側の家の一つのの扉の斜め上にこの世界ではお決まりのベットの絵が描かれた突き刺し式の鉄の棒と左右の鎖の先に半カプセル状の木の緑の背景にベットの絵が描かれた看板が・・・
早速皆でその扉を開け入り込む
「いらっしゃーい!」
聞こえたのは若い女性の声、
先にいたのは快活な印象を受ける、茶の髪を後ろでまとめ、貫頭衣の上に白いエプロン、頭に三角巾をまいている大人だが若い女性が横から振り返る
周りには、女性の奥に床と一体化したカウンターが奥にあるほか、丸い木のテーブルと椅子がいくつか並んでいる、
「ここ、宿屋だって聞いてきたんですけど・・・」
「ああ、確かに宿屋だよ~何名様?」
「十人」
「俺たちダブモンを含めてな・・・」
と、良星の話にカンテーラが注釈を入れた
「なら何部屋とろうか?四人部屋まであるけど?」
「どうする?」
良星が横顔でこちらを見る、それを見た四葉さんが先んじて口を開く
「女の子は別の方がいいでしょ?フリィジアはともかく、私はごめんだわ」
「え~相棒と一緒がいい!!」
そうやって俺の左肩に自身を寄せてくるフリィジア・・・
四葉さんは声を聴いたのかフリィジアの方を向き呆れてため息などつきながら、
「部屋は一緒でいいけどベットは別にしなさいよ・・・」
「じゃあ、四葉さんとフリィジア?、それに残りは・・・」
「後で決めた方がいいんじゃない?」
「そうだな、とりあえず、部屋だけ取って、話し合った方がいいだろ?」
鼓動とイグリードの意見に賛成だ
「俺もそうしたほうがいいと思う、」
そうして、左肩に取り付く氷の精霊に俺は目を向けた「フリィジアは?」
氷の精霊は楽しそうに笑顔のままで「じゃあ、相棒がそういうなら私も!」と答え、
「決まりだな!」
経緯を聞いていた良星が女性の方に踵を返し、見上げながら話し始める
「三部屋お願い!一つは二人部屋、残りは四人部屋だ」
「了解したわ、料金は・・・」
良星が鞄から取り出した袋の簡素な財布より料金を支払う
女性は両手に受け取った銅貨と銀貨の枚数を確認し、再度良星の方に顔を向ける
「確かに頂戴したわ、そうだ、晩ご飯と朝ご飯は?うちで出すけど・・・」
「追加料金内ならそれで、」
女性が軽く笑う
「あはは、追加料金なんて出さないわよ、うちはそれが売りなんだから!」
「じゃあそれで、みんなもそれでいいよな?」
良星が確認するかのように顔を向けてくる
「俺もそれでいいぜ」「僕も~」
「俺もだ」「私も」「俺もだな」
「私もそれでいいわ」「わたくしもそれでいいです」
「アクリスとレファンは?」
「僕もそれで」
「僕も」
女性の視線がいつの間にか僕たち全員を見るような角度に変わっていた
「わかったわ、じゃ、腕によりをかけて作るわね、その前に鍵を持ってきましょうか、あ、テーブルと椅子は勝手に移動させて休憩してていいからね!」
そう、女性は快活な笑顔を浮かべた・・・
・・・
・・・大型の白身魚のトマト煮込み・・・
・・・オレンジの魚の切り身のレタスのせカルパッチョ・・・
・・・スパイスか何かで黄色に染まったエビタコカイの煮込み飯・・・
・・・それらが一様に白く大きな皿の上に乗せられ、机の上に左より並べられる・・・
・・・俺たちの前には一見するとご馳走にしか見えないごはんが並んでいた・・・
・・・こうして、俺たちは荷物を部屋に降ろし、カウンターのある部屋で、右側の二つの木のテーブルに十の椅子を囲むこととなったのだった・・・
そして、前述で上げたものはカウンターで僕たちを受け付けてくれた女将さんが持ってきた料理である・・・
皆が目を輝かせている・・・
「毒は入ってないぞ」
「ですね」
カンテーラとウィルピーのその言葉を皮切りに、皆がスプーンとフォーク、で思い思いに取り皿に入れていく・・・
俺はカルパッチョからだ・・・こちらも一点の曇りもない白い取り皿に多めに取り、フォークで突き刺し口の中に放り込む!
・・・魚の油と野菜のうまみが何ともいえない!
続けて順番にトマト煮込みと煮込み飯を掬いとり皿に入れ、フォークでトマト煮込みの魚の身を刺して口に入れる・・・
魚の淡白なうまみとトマトの酸味がたまらない!
続けてスプーンに持ち替え、そのスプーンで口に放り込んだ煮込み飯も魚のうまみと御飯がたまらず、他の料理と合うように薄く作られている・・・!!
・・・全ての料理から言えることだが、おそらく、素材そのものはこの島ではありふれたものなのだろう・・・
その証拠に魚介類以外はたいして種類は使われていない、せいぜいお米とトマトとレタスがあるだけ、米を黄色に染めたものは知らないが、
味付けも淡泊そのもの、ほとんど塩しか使っていないだろう、
しかし、その新鮮さが、塩の絶妙なうまみが、これらの料理を一級品へと仕立て上げているのだっ!!
「そういえば、なんでいきなり毒の話なんてしだしたの?」
左の方のアクリスが僕たちに疑問をぶつけてきた
「前に毒に当たった人がいたのよ、」僕の正面右手の方で、左手隣りのカンテーラの先にいる良星に細く横目を送る四葉さん「ね、良星?」
「あんときは死ぬかと思ったぜ・・・」
「ふぅん・・・」
四葉さん、良星の話にあいまいな返事を返すアクリス、
そうして、皆が大皿を空にし、それぞれの部屋に戻っていく・・・
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