ネトゲ恋愛記 ~サブタイトルは秘密~ 1
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「サラさん、ゴブリンが現れました」
「まかせろ、片づける」
大人の雰囲気漂わせ、後頭部上にまとめた黒髪と黒いカクテルドレスをはためかすサラさんの大剣の薙ぎ払いにより洞窟に現れた一体のゴブリンが一刀両断され消滅する
「このぐらいか・・・」
私の名前は菊形 亜里沙、ネットネーム、トークンアリス!
茶色いショートボブの髪を揺らし、茶色く大きな瞳、スカートの様に丈の長い黄色い上着に緑の短パンに緑のシャツ、それに赤い宝玉をいただく杖・・・
とは言っても、この姿はこのネットゲーム、クックルードでの仮の姿である、本来の私は髪と目の色はもっと黒く濃いし、短パンなども履かない、ミニスカは履くけど・・
「もう一桁ダメージが足りていないな、やはり、レベルが調整されるクエストだと心が躍る・・・」
サラさんの今の格好は胸と背中の開いて長いスリットの入った体の線が出るシンプルなカクテルドレスに、ハイヒールを履いている、
両方とも色は黒、そして背中に背負うは内に向かって歪曲した両刃を持つ鉄の無骨な大剣だ
細めの目と長くもみあげ近くに垂らしたふわふわした髪が包容力ときつさを併せ持った印象を与えている、もちろん、プロポーションも抜群である、これもかりそめの姿でしかないが・・・
サラさんは私の所属するギルド、ミスティーシャの団長であり、すでにこのクエストの適正レベルをとうの昔に超えており、
このクエストはそういったプレイヤーがクエストを受注、あるいはパーティーとして補助する場合には装備品とスキル含めそれ相応の能力まで落とされる仕組みになっている、
と、前に立つサラさんが私の方を向く
「さっさと行くぞ、お前の方がひ弱なんだから、敵が現れたら真っ先に後ろに下がれ、ま、クエストの受注者はお前だからな、先頭はお前が行ったほうがいいが・・・」
「そうですか?」
「その方が楽しめるだろう?」
そして、私達は先へと進む・・・
サラさんはいつもあのカクテルドレスだ、ギルドの部屋内でも、魔術師用の装備なのだが、
見た目だけ変わるファッション装備というやつで、サラさんのクラスは大剣使いのダークバーサーカー、
本来の装備もブラックグラディエーターシリーズというごついもので、それをファッション装備で消したり変更したりしている、
武器のみはどういうわけだか同系列の物にしか変更できないので、初期から装備できる見た目だけは人気の高い武器の一つ、アイアンバスターソードにしているらしい、黒い鉄塊を一辺をくの字にした三角刃に仕立てて持ち手を付け、刃には幾何学的な鉄の模様が入っている
地中に三角形に掘られたような洞窟を奥へと進む・・・
・・・奥に待ち伏せが三体・・・!
小柄で緑色の体を持つ亜人、鼻や耳は尖り、嫌らしい、瞳孔の無い黄色い目、
装備しているのは腰に獣の革を巻いたものに手には木製の先が膨らんだ棍棒、
典型的なゴブリンというやつだ
「サラさん」
「下がれ」
私の前にサラさんが出てくる・・・
「どうしますか?」
「最初に、通常攻撃より攻撃範囲の広い補助技を使う、私も防御が心もとないのでな」
盾役の職業じゃないせいか・・・遠距離攻撃だとMP消費があるうえ一体にしか攻撃できない故の補助技からの出だしなのだろう、
少しずつ慎重に近づいて・・・ゴブリンの一体がこちらを向いた!?
「デバスターブレイク!!」
サラさんが大剣を大地に叩きつける!
画面を通じて私の手にもその振動がはっきりと伝わると同時に、ゴブリン達が立ったままのびたカエルのように全身を伸ばし細かく振動し止まる
デバスターブレイク(敵の数が多ければ多いほどステータスダウンが多くなる技、具体的には特殊な振動波をモンスターにぶつけることにより、それがモンスターを媒介に感染、振動はモンスターの自己回復力によって収まるものの、その間、モンスターの振動同士が共振しあう、結果、ステータスダウンが複数響くという仕組み、あまりに敵が大勢だとモンスターは行動不能になる)サラさんのお気に入りの技の一つだ・・・
「今だ!」
サラさんが走り、大剣を横薙ぎに振るう!大剣の攻撃範囲なら、三体一度に仕留められる筈!
見事にゴブリンを両断するサラさん!
が、そこに棍棒が飛び込んできて降り降ろされる!
「ぐっ!」
サラさんの悲鳴が響く、
サラさんの前には一体のゴブリンが!?
しまった、後ろにいつの間にか下がって回避していたか・・・そこで大剣の攻撃の隙を突いて棍棒で攻撃してきたっ!?このままだと二発目が来るかも!?
「ウェイクアップ!(敵攻撃によるひるみや気絶を解消する術、相手に連続攻撃を受けている時にそれを脱出させるために使う、盾役はひるみ時間を短縮あるいは無効化させるスキルを持っているが、攻撃役であるバーサーカー系列も持ってはいるものの、バーサーカー系列の場合はあらかじめ発動させておくタイプでありHP消費もあるため使いづらい)」
「はぁ!」
すかさずの大剣での振りおろしが入り、横に両断されたゴブリンが消滅する・・・
サラさんが大剣を背中にしまい
「すまなかった、膝にクリティカルが入ってな、もう一発喰らえば危なかった・・・」
「いいんですよ、あ、HP回復しときますね、ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!(回復術の最下級術、HPを多少回復することができる、HPの調整の他にMP効率においてはトップクラスであり、回復役御用達の回復術である、ちなみに名称はヒール)」
緑色の星のような微量のいくつもの光が五度ほど繰り返しサラさんを包む、
「重ね重ね済まない」
「いえ、クエスト手伝ってもらってもらってる身ですし、さぁ、先に進みましょう」
そうやって、私達は奥へと進む、
さて、私がなぜクックルードというネトゲを始め、ミステーシャというこのような風変わりなギルドに身を置くようになったのかといえば・・・
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