カードゲームライトノベル Wカードフュージョン9話 失踪、失意、絶望、3
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「え~今日はわざわざお越しいただきありがとうございます」
まわりに波打つ鉄板で出来た建物の並ぶコンクリート床の広場の中央、紫の布がかけられた大きな物体の前で、僕が遠めの場所で見守る中、博士があいさつした、
ここは闘魂ロボット研究開発工場、その中央広場、
広いコンクリートの床と青空が広がり、まわりには簡素な金属の波打ち板で仕切られ立てられた建物が並んでいて、
広場の中には、たくさんの白衣や青いつなぎを着た人たちや各々、ヘリやダンプ、新幹線や機関車のパーツをそれぞれ体に付けたロボットが並んでいた、みな一様に中心いる博士の方に注目している、
一度家に帰ってランドセルを置いた後、こちらの方まで歩いてきたのだが、
「やぁ、双歩、合流できたな」
「やぁ、カーディン」
左前の方から一体のパトカーのパーツが各部についた巨大なロボットが来て、僕の左隣で中央の博士と紫の布がかけられている大きな物体の方を向く、
頭は先の切れた三角頭に額に羽とパトランプの金のエンブレムを付け、
その顔は鋼の顔に黄色い機目、両肩はパトカーの前部が扇状に分離したものであり、
胸部にはゆるいV字のパトライトが付き、両足はパトカーの後部を両足を曲げた状態から思い切り伸ばして腰部から前後反転ものになっていて、
その四肢には外側にタイヤが一つ一つ付き、胴部には赤みがさしている、
「そういえば、護衛って言ってたけど、そんなに大事なの?この集まりは?」
「さぁな、私は何も聞いていない、轟巡査なら聞いていると思うのだが・・・」
ふむ・・・轟さんは聞いていて、カーディンは聞いていないのか・・・
「で、その轟さんは?」
「ここいら辺りを回ってると言ってたな」
それなら、少し探せば見つかるかもしれないな・・・
そう考え顔を見回してみるが、それらしい人間は見つからなかった、恐らく、人だかりかロボットの陰に隠れてしまっているのだろう、
・・・それなら、聞きたかったこと、聞いておくか・・・
「ねぇ、カーディン前に調べておいて欲しいことがあるって、言ってたよね」
「双歩、それは轟巡査から口止めされている」
「ということは、ダメだったんだね」
「・・・」
やはり・・・そう都合よくはいかないか・・・
ここで良い報告が無いってことは、悪い報告しかないってことだ、
その悪い報告を聞けば・・・僕がどういう行動に出るかわからないから・・・
でも、これでだめなら、エルドガンがいなければ他に手は・・・そうだ!!
リュッケン達の穴を利用して、向こう側に乗り込んでしまえばいいんだ!!
消極策だけどそれしかない、でもその前に、カーディンが調べたことを詳しく聞いておいた方がいいか・・・
「カーディン、ちょっと詳しく聞きたいんだけど」「それでは、早速機械を起動してみましょう!」
広場の中央から声が響き、広場中央の博士、
白衣を青いつなぎの上から着た柔和な感じのする老人で、
髪と口元と顎から生やした少し長い無精ひげと分量多めの眉毛はすでに白く、
その目は少したれ気味で、服装は全体に青いつなぎを着てその上に白衣を羽織り、さらにその下ではボロボロの緑のスニーカーをはきつぶしている、
その博士が背後の物体の紫の布を両手で持ち、取り去った、
紫の布の中、そこにあったのは、下に関節と足元を鉄板が、その間に橙の四角い鉄棒がそれぞれ組み合わさって作られた簡素な機械の足が生えて上にU字型の部分と柄で作られた大きい鉄の音叉が付いた大きく大仰しい黒いピアノ、
あれは・・・エルドガンの部屋にあった機械の一つ・・・?
博士がそのピアノの鍵盤の前に立ち、一気にその両手をピアノの鍵盤に叩き付ける!
ジャァアアアアアン!!
とてつもない不協和音があたりに響き渡っていく、
博士、ピアノの心得ないな・・・
ってあれ、ピアノの上の音叉が振動してる・・・
ジャァアアアアアン!!ジャァアアアアアン!!ジャァアアアアアン!!
音は少し小さいなれど、博士が叩いた鍵盤の音を幾度も限りなく再生し続けて行く、
少しうるさいけど、あれは一体・・・
等と疑問に思う間にも、博士がピアノの前に移動し、僕達の方に向き直る
「ご覧ください、これで次元の穴が開くことは無くなりました!!」
な、何だって!?
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「この装置はこの音によって向こう100キロの距離にわたって次元を安定させ、今まで襲撃とその帰還に用いられてきた穴を封じる効力を持ちます」
おぉおおおお~!!
辺りの観衆から感嘆の声が響き渡った、
ちょっと待って、あの装置が起動したってことはつまり・・・これで向こうから襲撃してくることは無くなる、そう、向こうの穴を利用してエルドガンを助けるという手も使えなくなるということになる・・・
「カーディン、あの装置は・・・効いてるの?」
「ふむ・・・」
カーディンがその目を点滅させながら辺りを見る、
そして、しばらく見た後に点滅を止め、僕の方を向く
「私のセンサーだと、この辺りの次元の歪みが極端に減ったように見える、本来なら、次元とは常に多少は歪んでいる物だから、あの装置は一応は効いていると見て間違いないだろう」
そう・・・なのか・・・っていうか、
「カーディン、そんなセンサーいつの間についてたの?」僕はあの装置の事について誰かから、例えば博士かエルドガンから聞いていないかという趣旨で話したつもりなのだが・・・もっとも、エルドガンからは前に装置の話を聞きそびれたから時間的に、博士からはこの集まりの事を聞いていない時点で、両方共に、実際には望み薄だけど・・・
「エルドガンにバージョンアップしてもらった時にいつの間にか付けられていた」
ううん、確かに、必要なものかもしれないけど、どうしてそんな物までカーディンに付けたんだ、エルドガンは何を考えてるんだ?いいや、それより・・・
「カーディンそれはわかったから、さっきの僕が調べてって言った話、ちゃんと聞かせて」
「・・・双歩の考え出した可能性だが・・・」
カーディンがその顔をうつむかせる
「双歩の考え、エルドガンがいなくても、芽工 映命の治療が可能なのではないか、という話だったな」
「そう・・・」
つぶやくのが・・・やっとだった・・・
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