バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

失踪、失意、絶望、/22 カードゲーム小説WカードFu

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カードゲームライトノベル Wカードフュージョン9話 失踪、失意、絶望、22
 
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 「これでどうじゃ!」崩落があってから数刻、
 博士がコンソールの中央右手上の青い四角のボタンを右人差し指で押すと、僕達が部屋に入ってきた時の扉がスッと左右に開いた、
 部屋の中は隊員たちにより順調に土と岩の撤去作業が進んでいる、
 幸い、輪っかや部屋の機能に支障をきたすようなことは何もなかったらしい、
 カーディンの修理も博士が優先してやってくれた、上からロープが来たし、コンソールの修理がいつまでかかるかわからない上、向こうから誰か来るかもしれないのでというのが理由だ、もっとも、カーディンも大して傷付いてなかったし、コンソールの修理もすぐだったが・・・
 デッキケースも回収できたし、さしずめ、今の部屋の雰囲気は、どこかの遺跡のような荘厳な雰囲気をたたえている、といったところか、
 辺りが土と岩と衝撃でいい感じに風化したようになっており、上からは木漏れ日交じりの柔らかな日の光が差し込んでいて、
 中央には内側割れた部分に宇宙のような紺色をたたえる神秘的な輪・・・ゲートとか、そんなふうな呼び方をした方がいいだろうか、
 無理やりこじ開けられたようになっているその輪の中にはおそらく・・・
 と、後ろから何か、鉄の足音が聞こえてきた、
 ガション、ガション
 一体何が
 「おお、来た来た!」
 博士の声が響く中で後ろの方を見ると、明らかに場違いな、グランドピアノに鉄の足が生えたようなロボット、
 あれは、なんかどっかで見たような・・・
 刹那、奥の方から隊員たちが担いで運んできた、U字型の金属製の音叉の様な物が上に立てられ、ようやく合点がいった、
 確か、あいつは、エルドガンの残した空間調律ロボじゃないか!
 「な、何であれがここに・・・」
 「あれ、双歩くん知らなかったのかい?」
 右後ろから、僕の疑問に答える轟さんの声、
 「轟さん、どういうこと?」
 「どういうことも何も、ここに僕達が踏み込んだのは、このが怪しいから調査、ってのもあるけど、本題は、あの輪っかの中の穴を、あの調律ロボットで完全に閉じるためだよ、ここを発見したのも全国であいつらが出てくる穴みたいなのが無いか調査していた時に、偶然、この近辺で反応が見られたからだ、もちろん、あの空間のゆがみを感知するエルドガンの機械をいくつか複製してね、もちろん、あの調律ロボも、エルドガンの寄越した設計図から作った二台目さ、テスト運転もばっちり行ってる」
 なるほど、最初から閉じるためにここに踏み入ったってわけか、でも、それならなおさら、僕はこの先に進まなきゃならない、
 「カーディン、お願いがあるんだ」
 「わかっている」
 右手の方にいるカーディンが、トレーラーの幻影から分離し、ロボットとなって、僕の右手横まで下りてきた、
 僕は、心にある決意を改めて固め、カーディンを見る
 「この先に・・・一緒に来てほしいんだ」
 そして、ゆっくりと、輪っかの穴の方を、左手を伸ばし、左手人差し指で指す
 「あの先へ、エルドガンを、いや、映命さんを助けに、僕一人じゃ、きっと、間に合わないと思うから」
 そう、映命さんを助けるためには、僕一人じゃ間に合わない、カーディンの助けがいる、
 カーディンが僕を見据える、数巡、誰も話さず、僕の耳にはなんの音も聞こえぬほどの間が空く、
 そして、カーディンのその目が光りだし、点滅
 「いいだろう」
 「え・・・どういうことだい二人とも!?」
 「言った通りです」
 「その通りだ、轟巡査」
 そう、僕達はこのためにここに来た、カーディンから連絡を受け、向こう側に行く穴があるかもしれないと・・・
 この先はきっと、エルドガンのいる場所に続いてる、ここにくる前、ジョーカーが出てきたのがその証拠
 「で・・・でも、この先に何があるかわからないんだよ、もしかしたら、人の住める環境じゃない可能性だって」
 「その点は心配ありません、私にインプットされてるデータには、こちらと様々な相違がありますが、人間が行っても、生きて行ける環境であるとインプットされています」
 「誰がそんなデータを・・・あいつか!」
 そう、僕達はあの穴の先が何なのかは誰も知らない、唯一、それを知ってそうなのといえば、
 現在、大絶賛さらわれ中のエルドガンしかいない、
 あの人なら、カーディンにそう言ったデータを打ち込む時間も十分あっただろうしね、カーディンのバージョンアップに関わってたんだから・・・
 「しかし、一つ心配事がある」
 ん、カーディン?心配事って一体何だろ?
 「それは長期間に及んだ場合、君の勉学がおろそかになることだ」
 う、それは・・・
 「どうすればいいか、ううむ・・・」
 カーディンがうつむいて右手で口元を覆い、何かを考えだす、別にそんな心配はしなくても・・・
 と、カーディンが顔を上げつつ右手を口元から外す「そうだ!」
 どうやら、何か考え付いたようだ、カーディンが僕の方を見
 「私が君に勉学を教えよう」
 はい!?
 「幸い、私には学校で習う一通りの知識がデータベースにある、それを活用し、穴の向こうにいる間、君の勉学をサポートしよう」
 おいおい、本当にカーディンが先生役すんの?出来るのかな、カーディンに・・・
 「行くんですか?」
 僕が疑問に思う中、右手、扉の方から声が聞こえた、
 ん、今度は扉の方?あ、サーディン、
 サーディンがロボットになってそこに立っていた
 「もう直ったのか?」
 「おかげさまで、皆のおかげです!」
 サーディンが右手と右腕をまっすぐに外側に伸ばした後額に傾け、敬礼する、だがすぐに敬礼を解いて再度カーディンを見据え
 「もう一度聞きます、行くんですか、どうしてもですか、同じシステムを持つもの同士、ようやく顔を合わせられたというのに」
 「すまないが、これは私が行きたいんだ」
 カーディンがチラリと僕の方を見る、
 「双歩の事が心配だし、なにより、エルドガン」
 と、カーディンが穴の先を見る
 「そう、あの人は結局、私達に何を託したかったのか、それを聞かねばならない」
 確かに、エルドガンが僕達を見て、僕達の新システムを見て、僕達に結局、何をさせたかったんだろうか・・・
 カーディンに穴の先のデータも託したようだし、まるで・・・
 いや、よそう、エルドガンがどんな考えであったとしても、結局、エルドガンを助けなきゃいけないというのは変わらない、
 助けた時に、カーディンがきちんと聞くだろう・・・
 「行くんじゃな」
 ん、今度は博士か
 いつの間にか、左手奥のコンソールの方から、博士が僕達の方に近寄ってきていた、
 「なら、これを持って行きなさい」
 博士が白衣の右ポケットから、赤い何かを取り出し、僕に見せて来た、
 それは赤い大きな丸いスイッチが付いた、球体の鋼の機械
 「これは・・・」
 「ビーコンじゃよ」
 「ビーコン?」
 「うむ」博士が仰々しく顔を大きく縦に振る
 「単に波長の特殊な電波を出す発信機じゃよ、向こうに行って、エルドガンの奴を回収したら、こっちに戻ってきて、穴の向こうのコンソールをいじって小さ目の穴を作ってこのボタンを押し、電波を発信してくれ、その電波が来たら、一時的にあの調律ロボの動きを弱め、こっちの方に帰還できるよう手配しておくからの、なあに、調律ロボの原理上、小さめの穴なら作れるはずじゃ、決して、敵に奪われるんじゃないぞ」
 「わかりました、博士!」
 ビーコンを受け取り、右手に持つ
 「双歩、行こう!」
 「うん!」
 カーディンがパトカー形態に変形する、
 僕はその助手席の方に走り込み
 「双歩君!」
 「行かせてやれ!」
 「でも、博士!」
 「いいから!」
 後ろ髪引かれる思いで助手席のドアを左手で開け、乗り込み、再び左手でドアを閉め、ドアのロックを押して閉める
 チラリと後ろを見ると、轟さんがこちらに来ようとするのを、博士が右手を轟さんの左肩に乗せ、しっかりと押さえている所だった、
 僕は、そのまま正面を向き、ビーコン持った右手で左後ろにあるシートベルトの金具を引き出し右腰の方の留め具にまで持ってきてカチッっとはめる
 「行くぞ!」
 カーディンが叫び、走り出した、そして、瓦礫を飛び台にして、輪っかの穴の中に跳び込む!
 
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