カードゲームライトノベル Wカードフュージョン14話 メインサーバのありし場所9
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「ぐわっ!!」
デコピンを喰らったジャルーソが尻もちをつく、そして、立ち上がりながら淡々とした態度で
「ぐっ、まさか、これをクリアしてくるとは・・・」
言い放つ、よし・・・
「さぁ!これで作戦への参加を許可してくれるね!」
「仕方がないな、実力を示されたんだ、参加させないわけにはいくまい、ただし!!」
唐突に、ジャルーソが僕の方を真正面に見る
「絶対に生きて戻ってこい!多少の怪我も許さんからな!それとカーディン!!」
「なんだ?」
ジャルーソが右肩側にいたカーディンの方を向く
「こいつを死なせるなよ!怪我もダメだ!人間はどんな怪我で死ぬかわからん、医療知識のある奴も今回の作戦には参加していないからな、私ならある程度見れるが、それでもある程度でしかない、絶対に死なせるな、怪我させるな、守りきれ!!」
「元よりそのつもりだ!!」
カーディンが右拳を握って体の前に上げ、その意志を示す
まぁ、僕はとりあえず避けてりゃいいから、カーディン達よりは楽なんだけど・・・
「さて、戻るぞ、そろそろ作戦決行の時間だ!」
ジャルーソが僕の後ろ右手の方の車たちが集まる場所を向き真っ直ぐに戻って行く、
それに従い、僕とカーディンは一瞬目を合わせると、
僕はカードが回収されたデッキケースを右手にとって左内ポケットに戻し、カーディンと共に戻り始める、ビックハンド達はいつの間にか消えていた、
にしても、悲劇って一体何だろう、って、聞いたって、絶対教えてくれないだろうな、あのジャルーソって・・・
「準備は出来ているか!」
「後は隊長たちが乗るだけです!!」
戻ったところであったのは、いくつもの大きな球体の鉄の弾、
なぜかすさまじく嫌な予感がし、と、鉄球たちの方を眺めていた長老がこちらの方に気が付き、向いて、少し気を張った感じになり
「おお、戻っておったか、で、結果は?」
質問してきた
「ああ、とりあえず、この作戦への参加許可は出した、15番鉄球だ」
今、15番鉄球って言わなかった?一体あの鉄球で何するわけ?
そんなことも考えている間にも、長老がこっちの方に近づいてきた
「すまんのう双歩君、怪我は?」
「いえ、どこも・・・」
すると、突然、長老が右耳の方に近づき、小声で
「ジャルーソのやつな、昔」
「聞こえてるぞじーさん」
げっ・・・
ジャルーソがこちらを向いて近づいてくる
「何をこそこそと話している」
「なぁに、老人はたまに昔話をしたくなるもんじゃて・・・」
「昔話だと?」
ジャルーソがこちらをにらんできた
「好かないな、他者の過去を勝手に・・・」
「まぁよいではないか、このままだとお前さん、こやつに悪印象しか持たれないぞ?」
「構わんさ、それで作戦に支障をきたさなければな、ほら、作戦の開始はすぐそこだ!お前達が使うのはあっちだ!!」
そして、ジャルーソが唐突に左手人差し指で向かって右側の奥の方を指す、
そこにあったのは、二つの半球状の空っぽの鉄球が上の方に平面を向け、横つなぎになっている物体だった、
こ、これは・・・?
「カーディン、お前は車に戻れ、そうじゃないとあの中に入らない」
「わかった!!」
カーディンが両腕を180度回しつつ両肩と共に上げて頭を閉じて隠しながら両腕を両肩に収納してパトカーの前部と化し、
同時に腰部を180度回してパトカー前部のタイヤのある面をこちらに向け、両足を思いっ切り曲げてパトカーの後部にして前の方に倒れ、パトカーのタイヤを地に付ける
っていうか、ちょっと待って・・・
「い・・・今・・・あの中に入るって」
「そうだ」
ここでなぜかジャルーソが両の腕を大仰しく組み
「中世、大砲が開発された時代から用いられてきた由緒正しき攻城戦法だ」
「近世はこんな戦法は用いられてこんかったからの、まさかこんな手を使って来るとは向こうも思っていまいて・・・」
「向こうの城には電磁バリアもあるが、貼られる前に侵入してしまえば問題無い」
「電磁バリアは消費電力が激しいからの、四六時中貼っておるわけにもいかんのじゃよ・・・」
「それじゃあ、俺が使うのはあっちにあるからな、」ジャルーソが右人差し指で右肩向こうを示し自身の目線も向け「双歩、カーディンの中に入っておけよ、衝撃でぐちゃぐちゃになっても知らんぞ」
「カーディンの中に入ってても衝撃でぐちゃぐちゃになるってば!!」
「大丈夫だ、人間そんなにやわには出来てはいない!!」
しかし、僕の言葉もむなしく、ジャルーソはそう言って向いた先の方に歩いて行ってしまった
「双歩、私の中に入っていれば想定される衝撃からは守られる!多分!!」
多分なのか、大丈夫なのか本当に!?
ここはカーディンの言葉を信じるしかないか・・・
渋々ながらもカーディンの助手席の方に近づき、左手でドアを開けて中に入り、
左手でドアを閉めつつ窓際にあるロックを押して閉め、右手で左肩上のシートベルトを引き出し、右腰にある金具に取り付ける、
と、正面窓の向こうからジャルーソが上にハッチの様に上端が切られ、その上の端が左の方、直角に立ち上がって丸い穴の開いた鉄球の前に立ち、
ひとっ跳び跳躍で穴の中に入って行くのが見えた、
そして、中から右腕を出して鉄球の上の内側一部を持って閉める様子が見て取れる、
やっぱり、あの中に入るんだな・・・
僕がそんな感想を抱いている間にも、カーディンが半鉄球の方に近づいて
ガタッ!
「うわっ!!」
いきなり何かに持ち上げられる感覚を覚え、どうしたのかと助手席側の窓から外を見てみると、
ここにいたロボット達がカーディンを持ち上げいるのが見えた、
その中には明らかに老人タイプの者もいるところも見ると、やはりロボットなのだと考えさせられてしまう、
さすがに子供型は見かけなかったが、多分、身長が足りていないせいだろう
そのままカーディンは半鉄球の方に運び込まれていき、半球のもう一方が上にかぶせられ、
そして、繋ぎ目側を除く三方から、ガチャ!という音が聞こえた、
どうやら、かぶせられた瞬間に自動で金具によりロックがかかる構造になっていたようだ
と、かぶせられた後、よく見ると鉄球がすりガラスの様になっているのが見える、外側からはただの鉄球にしか見えなかったのだが・・・?
なるほど、これで様子を見て脱出しろってことか、それに、ただの鉄の球体の内部にいるよりも少しばかり恐怖が軽減されるな・・・
ん?まわりにさっきの人達が集まって鉄球を持って移動させてるな、後ろの方?どこに持ってく気なんだろ?
チラリと振り返ると、さっきのトラック達が一様に後ろの方を向いて、荷台を開いてこちらの方に向けてきていた、
いや、荷台?なんか、中が丸くなってるような、まるで大砲のような・・・
事ここにきて、ようやくあのトラックたちの正体に気付いた、
そうか、あれ、左右に荷台が開いてないトラックとかもあるけど、
あれの大半は、荷台に大砲を仕込んだ、もしくは、大砲を荷台に偽装したトラックか!!
そこで、僕達の入った鉄球が荷台に入れられ、荷台の僕達の前の方が上がって角度を付けて行く、
え、ちょっと待って、まだ心の準備が・・・
「カウントダウン!10!!」
どこからかジャルーソの雄々しき声が響き渡った!!
って・・・ちょっと待って、まだ心の準備が!!
「9!!」
「えっ!、まじでこのまま行くの・・・?」
「8!!」
「双歩、覚悟を決めろ!!」
「7!!」
「いや、でもこの先どうなるか予想付く」
「6!!」
「双歩、いざって時は助手席用のエアバックもある!!」
「5!!」
「それでどうにかなんの?」
「4!!」
「どうにかしてみせる」
「3!!」
「う・・・」
「2!!」
「ううう~」
「1!!」
「さぁ、双歩!!」
「わかったよもう、覚悟決めるよ!!」
「0!!」
ズドン!!
大きな火薬音と共に、僕の体にGがかかりながら眼前に城伸びる空が迫って行き、
そこから下の方を向いていくと同時にさっきの城の根元部分が目に入り、
そのまま城の壁の一部に突っ込んだ!!
ズドーン!!
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