バハムートの焼肉@オイレンのラノベ置き場・双札

月から金、土はときどきを目標に私が書いたラノベを置いていきます。

Wカードフュージョン 8話/2 戦獅の咆哮 カードゲームライトノベル Wカード

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カードゲームライトノベル Wカードフュージョン8話 戦獅の咆哮2

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 「ちくしょう、また負けちまったぜ・・・」
 「まったく、また勝てなかったじゃない」
 悔しそうにつぶやく子慎君に向かって、呆れたように言葉をかける弧菜さん、
 「まぁ、まだまだ、ってことだね」
 カードバトルに使ったカードを両手でかき集めてまとめ、机でトントンと叩いて整え、そのカードの束を右手に持ち変え
 僕の名前は鋼野 双歩(ハガネノ ナラブ)
 上着に来ているジャケットは赤く、袖端や下端が白く、左肩裏に車輪と飛行機の片翼がくっ付いたようなオブジェがあり、
 その中にオレンジのシャツを着、腰に茶色のベルトを巻き着けていて、下に濃い色にジーパンをはいた、
 茶髪の前の方を上に上げているナイスガイ・・・いや、よく童顔だって言われる
 「ああ、切り札さえ引けてたらなぁ・・・」
 ん?そういえば・・・
 「子慎君の切り札って何?前も引けてたらなぁ、なんて言ってたじゃない、もしかして、レオリング・メタルって名前じゃない?」
 「おっ!よく知ってんじゃん!!」
 子慎君のテンションの上がり始めた声が耳に響く、
 やはり・・・
 「イベントの配布で手に入れた奴でさぁ、めっちゃ強いの!!コスト4でパワー4000あるんだぜ!!でも、同じカテゴリのカードがまだ発売されてないから、別のカテゴリのデッキに入れてんだよ!!」
 ううん、あのカードが引けても今の子慎君のデッキに入ってる他のカードがあれじゃ勝てない気が、
 いや、僕が見てないところで別のカードが入ってるのかな
 「あ、そうだ!!レオリング・メタルで思い出したけどさ、Wカードの漫画見たか!?ほら、アリスがワルディンに対して啖呵切ってる奴」
 一瞬、右側にいる映命さんの方からピピクッ!!っと緊張が走った感じが伝わってきた、
 弧菜さんがじーっと映命さんの方を見ている、
 「どうしたの、映命ちゃん?」
 「あ・・・いえその・・・最近、アリスって名前の人と色々トラブルに・・・」
 「あ、ああ、そうなんだ!!」
 弧菜さんが慌てて右ひじで子慎君を突っついた
 子慎君がビクッと刹那の間ひるむ反応した後、サッと瞬時に弧菜さんの方を見る
 「おま・・・何すんだよ」
 「あんたが漫画の話なんてしだすからでしょうが」
 「わかるかよ漫画の登場人物と同じ名前の相手とトラブル起こしてるなんて」
 「あの・・・お気になさらず・・・」
 映命さんが遠慮がちに右手など出しつつ二人がケンカしだすのを止める、
 に、しても、だ、
 そのアリスは話に出た漫画の登場人物のモチーフ、
 おまけに、アリスの話が正しいなら僕はその漫画の主役のモチーフと作者と会っていることになる、
 じゃあワルディンのモチーフはといえば・・・うん、何も言うまい
 それに、弧菜さんが映命さんの反応を見ぬいた辺り、映命さんの顔にも何かしらの緊張の色が出ていたのだろう、
 まぁ、あれだけの事があったんだ、なにかしかのトラウマになっていても不思議じゃない、か、
 机の上左側に置いた上のふたが奥に開いたデッキケース、上が白で下が黒で四角く中央にパトランプに羽を模した金のエンブレムが付いたデッキケース、を左手で持ち、右手に持つ束ねられ持ち替えたカードを入れて、
 その右手でふたを前に閉めつつその右手に持ち替え、ジャケットの上着左内ポケットに入れて、っと・・・よし!
 「映命さん!!」
 「はっ、はい!!」
 「僕で力になれることがあれば言ってよ!!前の咳は大丈夫?今日も病院行くって言ってたけど、なんなら、ついていこうか?」
 「あの・・・双歩さん・・・?」
 「そうだ、今度またどこ・・・か・・・に・・・」
 映命さんがまっすぐに僕を見つめてきていた、
 間違いない、映命さんが望むことはただ一つ、僕が無茶をしないことなのだ、
 その目は、それ以外には何もいらないと、僕にそう訴えてきているのがわかる、
 しかし・・・
 過ぎ去るは刹那の時、僕らにとっては永久の時
 「みなさんに・・・お話があります・・・」
 唐突にそう言って静寂を破ったのは、映命さんだった
 「お話って何?前の咳って?そういえば、給食の時に薬飲んでたよね、あれと関係が・・・?」
 弧菜さんが映命さんに話しかける中、映命さんがその口を開く
 「私、明日から、しばらく入院するんです」
 「え・・・」「え・・・」
 弧菜さんと子慎君の口から驚きの声が漏れるが、僕にとっては予想できたことだ、
 映命さんの体を治している機械、恐らく、それはどこにあるにしろ、映命さんの体の内部にある可能性が高い、
 そうでなければ拒絶反応など起きないだろう、
 それなら、取り出すためには手術する必要がある、
 つまり、その手術のために入院する必要があるのだ、
 と、映命さんがいきなり両頬を上げ、笑顔を見せる
 「でも、大丈夫です!!退院したら、もう通院しなくてもいいですし、薬も飲まなくていいですし、双歩さんの言っていた咳も、たぶん収まると思います」
 「なぁんだぁ・・・脅かさないでよ・・・」
 弧菜さんが安心して少し大げさに肩を降ろす、そして、映命さんを真正面から見据え
 「それじゃあ、少しの間の辛抱だね!」
 「はい!!」
 「ちゃあんと見舞いに行くし、宿題も持ってってあげるね!」
 「はい!!」
 「ほら!双歩君も!!」
 「あ、うん・・・」
 「双歩さん・・・」
 唐突に呼びかけられ、映命さんの方を向き、映命さんとまたも見つめ合う格好になる、
 「無茶は極力しない、ただ、それだけ」
 「・・・はい・・・」
 映命さんが顔を少し下にうつむけた、やはり、意図を察せられてしまったか・・・
 椅子から立ち上がり、左手で座っていた椅子を反転させて前の席に戻し、
 子慎君の机の右側にひっかけさせてもらっていたランドセルを右手で取り、
 映命さんのいる前方ではなく左側から、左奥にある扉に向かって歩き、二段スライド式奥にある取っ手を持って扉を左側に開ける、
 そして、後ろ手でドアを閉め、廊下の左に進み、その先左にある階段と降りた先左側の扇状の階段を一気に下りて一階に立ち、
 降りたところから左の方に歩いて先にあった四つ横に並んだ靴箱の中ほど左側高めの靴箱の前まで行き右手でその靴箱を開けて上履きを脱いでその右の手で持って放り入れ、今度は靴箱の中にあった薄汚れた白いスニーカーを右手で持って取り出し靴を持ったままの右の手で靴箱のふたを閉め、
 靴箱下のすのこ先まで行ってスニーカーをすのこの先の床に置いて履き、左右の出口の右側の出口から歩き出て、そこからさらに左側の校門出入り口に向かって歩いていって、
 校門外で左側の方を向いて家に向かって歩く、
 心配なんてかけさせたくない、この戦いが終われば心配することなんてなくなるだろうか、
 もしかしたら無くなるかもしれないし、無くならないかもしれない、
 この戦いが終わっても、僕が無茶を続ければ・・・
 って、何考えてんだろ、まずはこの戦いを生き抜くことが大切だ、うん!!
 終わらせるとか戦いの後とか、そんな大きかったり未来の話なんて・・・
 先の方を見ると、僕の家、クリーム色の壁に青い瓦の三角屋根、上に日の字型枠の見える二階建てで、正面以外を囲う灰色の石塀のある家、
 その前に、X字型のパトライトを付けた一台のパトカーが止まっていた、
 そういえば、すっかり忘れてたけど、今日は工場でエルドガンの話を聞くんだっけ・・・その迎えに来るとも言ってたな・・・
 
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